新橋トラストクリニック

医療機関の使命の一つとして、地域貢献があると思います。
もちろん医療機関もビジネスですから技術やサービスに対して正当な対価を頂くのは当然
です。しかし一方で、社会に還元するという姿勢を忘れたらそこはもはや医療機関ではあ
りません。

覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、平成１２年冬に、数年ぶりのインフルエ
ンザの大流行がありました。その年の秋にインフルエンザワクチンを製造する会社の一つ
が不良品をだしたこともあり、インフルエンザワクチンの供給が大幅に滞り、どの医療機
関でもインフルエンザワクチン接種を希望される方が殺到し、一方医療機関はワクチンが
ないためお断りするしかありませんでした。そんな中、受験生を抱えておられるお母さん
たちが、「あちらのクリニックはあと１０人分あるらしい」「あの病院はお願いすれば接
種してくれるかもしれない」などの情報が錯綜し、パニック状況になりました。親心とし
て当然だと思います。その際、あるクリニックが「１本１万円出して頂けるなら打ちます」
と言い出しました。このクリニック程ではありませんが、周囲の医療機関も一斉に値上げ
を開始しました。しかしこのようなことは医療機関としては本来あるまじき行為です。し
かし現実に行われたのも事実です。

その年、たまたまある会社のインフルエンザワクチン接種を早い時期に依頼され、その会
社の予約がキャンセルになったため、約１０００人分のワクチンを私のクリニックが余剰
に持っておりました。そこでこれを通常価格で提供致しました(当たり前ですが)。この時
接種を受けた方達にどれだけ感謝されたか、ご想像頂けると思います。以来インフルエン
ザワクチン接種は利益を出すための行為でなく、医療機関としての社会貢献として行うも
のだと決めました。どうしてこの料金で接種出来るのかとよく聞かれます。ワクチンに問
題がないのか、注射器など器材をケチっているのではないか、などと言われることもあり
ます。しかし答えは簡単で、日頃お世話になっている地域の方への私のささやかな恩返し
だと思ってやらせて頂いているからです。

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